正式な過払い請求

最適な点は1点に集約されるが、人間の舌で感じ取れる「旨さ」は最適な1点のまわりに少しだけ幅をもってばらけている。 例えばカップラーメンの待ち時間だ。
2分57秒38から2秒62過ぎても麺の旨さはそれほど変わらないだろう。 少なくとも人間にとっては、その差は感じ取れないだろう。
そうであれば「3分」というわかりやすい数値にして、麺の質は維持したまま、わかりやすさと使い勝手のよさを優先するのだ。 お湯だって98.5度も98度も90度も大して質に差が出ないのであれば、「その辺の温度だったらどれでもいいよ」という意味で「熱湯」ということにしてしまうのである。
統計学や工学は感覚を数値に置き換える学問だ。 統計や工学的解析の結果を、そのまま利用することは難しい場合が多い。
カップラーメンの時間や温度の例のとおり、数値をそのまま利用すること(温度計とストップウォッチでラーメンを作る)は非現実的である。 そこで、現実に応用できるように、一定の妥協をするのである。

妥協のポイントは「質を大きく損なうことなく」かつ「わかりやすく使い勝手がいい」の2点である。 金融工学もこの2点を常に意識しながら発展しているのである。
解析結果としていろいろな数値が出てくるが、それらの数値を真っ正直に使うことは稀である。 現実のさまざまな条件を加味して、多少まるめられた数値が利用されることが多い。
これは質を考慮しつつも、わかりやすい数字にして、現実に応用できるようにする工夫である。 金融工学とはなんだろうか。
金融だけでも難しそうだし、工学だけでも難しそうだし、その両者が合体した金融工学など、聞いただけでも「許して、かんべんして!」という気持ちになる。 アントニオ猪木とジャイアント馬場が合体してアントニオ馬場になったようなものだといえば、ますます混乱を助長するだろうか。
金融工学の代表格はオプションである。 オプションが浮かぶとデルタとかガンマとかが意味はわからないのだが頭に浮かび、ついでにギリシャ文字も頭に浮かぶ。
6だβだEだと気取った形のあの文字だ。 金融工学は確かに難しい。
難解な公式や定義のてんこもりだ。 金融工学は理屈そのものが非常に難解である。
何回勉強しても難解である。 などというシャレを言っても難解である。

難解ではあるのだが、所詮は同じ人間が考えたことだからわからないはずはない。 理解を妨げている要因はなんだろう。
実は、その要因はギリシャ文字にあるのではないかと私はにらんでいる。 ギリシャ文字……読めないのだ。
読めないものはわからないのである。 やつらはいやにカクカクトゲトゲしているかと思えば、必要以上にダラダラしていることもある。
とても文字には見えないし、読み方を知らない限り読みようがない。 考えてみていただきたい。
「『Q』はどう読みますか?」と問われたとしよう。 オタマジャクシの頭部のようなこの曲線を読めといわれても「もっこり」とか「プックリ」としか読みようがない。
『6』だったらどうだろう。 「3が反対向いたやつ」としか読めないのだ。
Qは「オメガ」、8は「イプシロン」と読むのであるが、読み方がわからないと頭にもスラスラ入ってこない。 『Q+8=r』なんて算式が出てきたらパニックである。
「え−つと、もつこり+3が反対向いたやつの合計が、ん?ってなんだ?もうっ!どうでもいいっ!」。 読めないがゆえに、わかりにくさが増幅されているのである。
ギリシャ文字なんて大したことはない。 文字に馴染みがないことで恐怖心もわくが、気にせず、それぞれの文字に与えられている意味を覚えていけばいいのである。

覚えればとっても便利なこともあるのだ。 天気予報をご覧になることがあるだろう。
天気予報の仕組みと金融工学におけるギリシャ文字は同じことだと考えられる。 太陽は「晴れ」を、傘は「雨」を、雲は「くもり」を表す。
それぞれのマークが縦棒で区切られていれば「ときどき」だし、斜め棒なら「のち」である。 こういったルールがあるからスッキリと日本の天気が理解できるのだ。
そうでなければ、日本の国土が文字で見えなくなり一苦労である。 「晴れのちくもり」という文字情報を「(寮/○)」という非常に単純な記号で代用できるメリットは大きい。
天気予報業界でもギリシャ文字化現象が起きているのだ。 携帯電話方面も事情は同じである。

電車を待っている間、電車から降り立って改札口を出たあたり、横断歩道で立ち止まった時、レストランで料理が出てくるまでの間、いたるところで携帯電話のメールチェックをしたりメールを打ったりしている人を見かけるようになった。 携帯電話でメールを送るのは一苦労である。
小さなボタンをプチプチ押し続けなければ目当ての文字は出てこない。 そこで省略の記号が考案されている。
「私は今、ご機嫌がうるわしい」と作文するかわりに(八一八)で済むのだ。 「怒ってるぞ、どうしてくれる!」だったら済むのだ。
携帯電話業界もギリシャ文字化しているのである。 これだけ覚えればいいギリシャ文字のルールギリシャ文字に話を戻そう。
例えばlから10までのすべての整数を合計することを式にしてみよう。 合計値匡1+2+3+4+5+6+7+8+9+10これでは長すぎる。
10までならなんとかなるが20までだと大変だ。 100や1000までなんて話になったらもっと大変だ。
そこで簡略化のスキルが重要になるのである。 なんらかのマークを拾ってこよう。
そのマークに「全部の数値を合計すること」というルールを与えるのである。 マークはなんでもいい。
例えば温泉マークにすれば上式はこう書ける。 合計値=処士しかし温泉マークには問題があるのだ。

数学について考えているにもかかわらず、温泉に行きたくなるし、そのうえフザけているように思われる。 かといって代わりに〒では郵便局が困るし、臭では不気味だ。
そこで各方面との折衝の末、数学発祥の地ギリシャの格調高く、カッコいい文字が使われているのである。 大文字は総合計、小文字は標準偏差表−1はギリシャ文字の読み方と、その意味の一例である。
これだけを覚えておけば十分である。 わずかこれだけである。
ぜひともギリシャ文字アレルギーを退治して金融工学の面白さを存分に味わおう。 金融工学とは何を扱う学問なのであろう。
建築工学なら建物や橋、土木工学ならトンネルやダム、人間工学なら座りやすい椅子などとイメージはわくのだが、金融工学は分からないのである。 カネに工学が必要なのであろうか?工学は感覚を数値化する学問である。
カップラーメンを引き合いに出したとおり、勘や感覚を明示化するのである。 50階建てのビルを建てる時に「鉄骨の厚さはこぶし1つぐらいです。
厚さの決定要因は棟梁の長年の勘ですね。 これだとドデカイ地震でも大丈夫」と言われ、これなら安心だと思う施工主はいないだろう。
下線部があいまいなのである。 「鉄骨の厚さは3センチ2ミリ。

これは耐震実験シミュレーションの結果であり、震度8の直下型地震にも耐えられます」。 これなら安心である。
数値で明示されており、あいまいさが排除されている。 これが工学のよさである。
金融の世界にもあいまいな事象が多くある。 例えば銀行預金の利息である。
1年で1%という利息を決めたとしても、それで銀行は本当に儲かるのか。

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